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成瀬巳喜男「おかあさん」新東宝の田中絹代はこわいゾ [日本映画の感想文-あ行]

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成瀬巳喜男 映画の面影 (新潮選書)




製作は「暁の急襲」の永島一朗で、全国児童綴り方集「おかあさん」(講談社発行)から、「せきれいの曲」の水木洋子が脚本を書き、「お国と五平」の成瀬巳喜男が監督に当たっています。
撮影は「海賊船」の鈴木博。主演は「安宅家の人々」の田中絹代、「黎明八月十五日」の岡田英次と香川京子で、三島雅夫、片山明彦、中北千枝子、加東大介などが助演しています。



新東宝が1952年に製作しています。


戦災で焼け出された洗濯屋の福原一家は、父が工場の守衛、母は露店の飴売り、娘の年子はキャンディ売りに精を出したおかげで、やっと元のクリーニング屋を開くことができた。


長男の進は母に会いたい一心から病気の身で療養所を逃げ出してきたために死んでしまったが、店は父の弟子であるシベリア帰りの木村のおじさんが手伝ってくれることになり、順調なスタートを切った。


年子が近所のパン屋の息子信二郎と仲良しになった頃、病気で寝ていた父が死んだ。


母は娘二人と引き揚げ者の甥哲夫を抱え、木村の手ほどきを受けながら女手一つで馴れない店を切り回すことになった。


木村と母の間についてあらぬ噂が立っていることを信二郎から聞いた年子は、娘心に思い悩んだが、妹の久子を他家に嫁にやる話まで出るようになると、女の腕のかよわさをしみじみと悟らざるを得なかった。

事実久子はもらわれていき、哲夫もやっと一人前の美容師になった母親の元に戻されることに決まって、一家は最後の楽しいピクニック(向ヶ丘遊園)に出かけた。


やっと母も一人立ちできるようになり、木村は自分で店を出すために去っていった。


母一人娘一人残った福原家では、新しい小僧も迎え、ようやく将来への安定した希望も湧いてきたのだったが--年子の心には、母は本当に幸せなのだろうか、とかすかな憂いが残って消えないのだった。


これは、キネマ旬報によるあらすじですが、例によって、実物とはかなり違っています

いちいち訂正は省きます。これは、特に昭和40年代頃までの映画雑誌の映画のあらすじは、映画が製作に入る時の資料を映画会社が、宣伝のため、映画雑誌に渡していたことが理由です。当然、途中で配役が変更になったり、ストーリーが変更になっても、映画雑誌は、記事の訂正を しません。

そういう資料が今まで残っているのですから、映画に限らず研究者は、やはり、実物にあたってみることが大切でしょう。



実は、わたしは、田中絹代が苦手です。頑固そうなそして病的なあの表情が怖いです。



本作でも、娘の香川京子の母をたたえる作文のナレーションが流れる中、人生に疲れたような表情をみせる田中が、何を表現しているのか。ハッピーエンドなのか、そうではないのかよくわかりません。


しかし、見所は、戦後の風景でしょう。例えば、当然、道路は舗装されていません。が、風情があります。歩きづらかったけれど、雨上がりには、日を反射して綺麗な道路だった。と、言っていた祖母の言葉を思い出しました。


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シルクハットの大親分 ちょび髭の熊 は。若山富三郎より石山健二郎が目立つゾ [日本映画の感想文-さ行]


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シルクハットの大親分 ちょび髭の熊 [DVD]

シルクハットの大親分 ちょび髭の熊 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • メディア: DVD


監督 鈴木則文
脚本 高田宏治
出演 若山富三郎/藤純子/伊吹吾郎/橘ますみ/白木マリ/安部徹/石山健二郎/須賀不二男/由利徹/名和宏

緋牡丹博徒シリーズの人気キャラクター熊虎親分が活躍する『シルクハットの大親分』シリーズの第2弾です。
まだ、スピンオフという語が知られていなかった時代に製作されたのですが、東映らしい発想といえましょう。
 
明治初期の熱海を舞台に、全編をアクションと笑いとお色気で綴った痛快任侠大作(大作なのか?)です。
 
例によって、ピンチの時には藤純子演じる兄弟分の緋牡丹お竜も登場し、熊虎親分の豪快さとは好対照の美しい殺陣を披露します。ピストル姿が素晴らしいです。
 
明治、文明開化の頃。湯の町、熱海温泉を舞台に、米国から輸入された日本最初の自動車をめぐって対立する二つの勢力が衝突していました。またまた例によって、善玉と悪玉です。
 
女に弱いちょび髭シルクハットの熊虎親分(若山富三郎)は、ある子爵(北竜二)と令嬢(橘ますみ)に肩入れする。そしてその旗頭になって、自動車を守り獅子奮迅の働きぶりをみせます。橘ますみの美しさが映えます。ちょうどTVの「江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎」の出演時期とかぶります。橘に想いをよせるのがエンジニアの伊吹吾郎です。若山は、混乱のさなか、二人の仲をとりもちます。
 
みどころは、若山が石山健二郎を乗せたまま、自動車(オウトモビィィルと呼ばれます)が、暴走するシーンです。約十分間ギャグのてんこ盛りです。周囲の人に迷惑をかけながら疾走し、止めることができません。鈴木監督らしく、肥てんびんも登場し、みなさまのご想像通りのオチになります。途中豚小屋にとびこみ。豚も乗ってしまいます。とっても危険な状況が続きますが、間一髪のところでストップします。この暴走ぶりは監督の自家薬籠中のもので、後のトラック野郎にも見られます。
 
果たして自動車は天皇に献上することになり、ヤクザものの若山はメンバーからはずされてしまいます。しかし、献上を快く思わない安部徹一派の攻撃が始まります。このため石山健二郎は、殺されてしまいます。いまわの際にかけつけた若山は、激昂します。日本刀を手に安部一派に殴り込みです。
 
「おまえら、おったんじゃ、日本のためにならんのじゃ」 汐路、須賀、や雑魚どもを次々と斬り殺しor撃ち殺します。もちろん、藤純子も加勢。藤が敵を斬りつけると、血しぶきがレンズに飛び、真っ赤なレンズのまま喧嘩を繰り広げます。 安部にとどめを刺して、自動車愛を藤に語る若山には泣けてきます。藤は、自動車を「見に行きましょう」と若山に語ります。
 
 ラストは、お茶目なBGMの中、伊吹が運転し、橘と北を乗せて、天皇に自動車を献上するパレードです。車の前面には菊のご紋が付けられています。菊の紋はそのために流された血を知っているのでしょうか?
 
この作品の魅力は若山先生のコミカルな演技です。しかし、それに加えて石山健二郎の素晴らしい演技が、本作をより優れたものにしています。「白い巨塔」のあのいやらしい産婦人科医、「天国と地獄」のベテラン刑事に匹敵する演技でしょう。

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昭和残侠伝 唐獅子仁義  は、キチッと前作の反省をしているゾ [日本映画の感想文-さ行]


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昭和残侠伝 唐獅子仁義 [DVD]



監督
マキノ雅弘
脚本
山本英明/松本功
出演
高倉健/池部良/藤純子/待田京介/志村喬/河津清三郎


高倉健主演の人気任侠シリーズ『昭和残侠伝』の第5作。
昭和の初頭、縄張りや利権をめぐる新旧ヤクザの対立を主筋に、高倉健と池部良が敵対関係にありながら、友情によって結びつくさまを描きます。
風間重吉(池部良)は花田秀次郎(高倉健)との果たし合いで左腕を失いました。
出所した秀次郎は林田一家(志村喬)の世話になります。
採石の入札をめぐり林田一家と老舗・浅野屋(御木本伸介)は樺島(河津清三郎)一家に圧迫されていました。
樺島一家の客人となった風間は、渡世の義理で秀次郎に果し状を渡します。



前作のライト感を反省したのか、本作は高倉健と池部良の対決シーンから始まります。
緊迫した決闘です。
藤純子も池部良のかみさんであるものの高倉に気持ちを奪われる役柄で、女の色気をみせます。
河津たちが狙っている藤の妹が志村の子分である弟と駆け落ちしたため、
事態は大きく動きます。
高倉との再戦中に、藤を殺された池部も、高倉と河津の本拠地に、乗り込みます。
「秀次郎さん、お供させていただきます!」
今回は、道すがら健さんがもろ肌みせて行きます。

ターミネーターが警察署に乗り込むときのように、正面玄関をぶち破る健さん。
ドスでの激しいバトルが始まります。
「風間さん、しっかりなせい」

池部に叫ぶ健さん。
血みどろの戦いの中で河津にとどめを刺す。健さんに
、警官隊と林田一家の若い衆が駆け寄ります。

どうです、前作よりドロドロして濃密な時間を過ごすことができます。反省会の成果でしょうか。
この映画のテーマとして、セリフでもたびたび出てくるのが 粋(いき) ということです。

高倉や池部が粋です。そして、敵かと思えば、また味方の 待田京介もかっこ良く粋です。

映画自体も粋になったのは、失敗を失敗のまま終わらせない、名匠マキノ雅弘のリターンマッチの
技量でしょう。

ついでながら、わたしは待田京介さんが好きです。もっとメジャーになっても良かったと思います


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昭和残侠伝 血染の唐獅子 は、ちと物足りないかな [日本映画の感想文-さ行]


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昭和残侠伝 血染の唐獅子 [DVD]


監督
マキノ雅弘
脚本
鈴木則文/鳥居元宏
出演
高倉健/池部良/藤純子/加藤嘉/山城新伍/津川雅彦/牧紀子/水島道太郎

昭和初期の浅草を舞台に、火消し纏に命を張る鳶政一家の男たちの意気地、侠気、友情を描く大ヒットシリーズの第4作。マキノ雅弘
が監督しているところが見所です。


鳶政の組頭・花田秀次郎(高倉健)と阿久津組の代貸・風間重吉(池部良)は親友だったが、鳶政と阿久津組は博覧会場の工事の利権をめぐって敵対していました。

鳶政の纏(まとい)が阿久津(河津清三郎)の手に渡る事件が起き、両者の対立は深まります。
山城新伍が、牧紀子を身請けするために、纏を質屋に入れたのが原因でした。山城は一人でかたをつけようと阿久津組に乗り込み、逆に殺されてしまいます。

 怒り心頭の鳶政の前に、牧紀子は女を使って纏を取り返してきます。そして、牧紀子は絶望して入水自殺します。

 阿久津は、鳶政がする工事に執拗に横車を押してきます。同業者も脱落します。

  度重なる阿久津の悪どいやり方に重吉は盃を叩き返し(と、公式ストーリーには書かれていますが、実際は、池部良の方が破門されます。だから、映画は、本物をしっかり鑑賞しないといけません)、秀次郎の許に駆けつけます。

  阿久津の執拗な妨害に秀次郎は殴り込みを決意します・・・。

 今回の敵は、河津清三郎で、脇には、天津敏が控えています。
  味方は、小林勝彦をトップに水島道太郎、曽根晴美、大村文武なのでいつ裏切り者が出るのだろうと不安にさせますが、結局、ラストまでいい人でした。
  おいしい役は、津川雅彦で、山下清aka小林桂樹aka芦屋雁之助風のキャラクターで、最後に泣かせます。

今回の高倉健と池部良の関係は、元々友人で、池部の妹の藤純子が高倉健の恋人です。ですから、高倉池部間の緊張の上に立った男同士の結びつきが感じられません。

 作品全体にも、やや掘り下げが甘いと思わせる部分も多々あります、しかし、それも、マキノ雅弘の職人芸なのでしょう。


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